もしも願いがかなうなら… 6
翌年の一月に入り、夕食を全部吐いてしまったことが何度かあったようです。
一月十日の明け方に帰ってきたときには、「きょうは仕事中眠くて、通路に倒れこんで寝ようかと思った。
もう自由に眠ることもできなくなった」と辛そうに話していました。
そして、十一日。
なんとなく心配で眠れず、夫の帰りを起きて待っていた私に、明け方二時十五分帰宅した夫は、「やっと仕事のメドがついた」と朝とは別人のような元気な表情を見せたのです。
私はほっとして眠りにつきました。
その、数時間後に自殺するなんて。
朝、八時、自宅裏の車庫で夫は発見されました。
私はロープにぶら下がっている夫を早く助けようと必死でした。
「どうか目をあけて!息を吹き返して!」。
でも、その願いもむなしく、夫は冷たくなるばかりでした。
私は夫の死に顔を見ながら、涙さえでてこず、あの一年半の生活を思いました。
まるで戦争だった。
夫がわが家にゆっくり帰れたのは死んでからでした。
私も子どもも、夫の体が冷たくなってから、ゆっくり顔を見た思いです。
はりきってスタートしたはずの生活が破綻してしまった。
ぼろぼろの雑巾のようになって、この人は死んでしまった。
死んでしまってからでは……という感じですよね。